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semスキン用のアイコン01 育種学をかじる:5 semスキン用のアイコン02

  

2010年 06月 14日

●「原種」はありがたいものか?

イネ(おコメ)はどうよ?
その他主要な農作物はすべて改良されて現在の姿になっていること。
例えばトマトの原種は食べられるか?おいしくはない。

 ***
・リプライズ:農業はビジネス、いちばん儲かる条件を追求する
近年までの農業におけるメインテーマは「増産」だったと言えます。
統計からみても、世界のコーヒー生産は人口増加とほぼリンクしています。
長年世界規模の戦争がなく、嗜好飲料に需要が集まることも要素です。
乱暴に言ってしまえば、これまではたくさん作りさえすれば良かったのです。

まずは増産が目的だったのですが、コーヒーには前提として克服すべき課題がありました。
安定した生産体制の確保です。
生産者にとっては「生き残れば次の機会が得られる」ため、これが非常に重要です。
品種改良の目的が「収量の確保」を第一としたことが、これで証明できます。

生き残ることが確保できれば、要求水準は次の段階に進むはずです。
日本においてコメの生産が過剰となり、
現在は味覚が選択の基準になっていることは好例です。

味わいの問題は「量的充足」を経て、初めて脚光を浴びるのです。
コーヒーの味に満足できないのは品種改良が問題ではなく、
品種改良のターゲットが「おいしさ」に向かっていないからです。
ゆえに、現在のコーヒーは発展途上であると言えます。

 ***
原種と目されるティピカ/ブルボンには、生産性、耐寒性、耐病性などの問題があります。
これらは生産者にとっては経営上のリスクと言えます。
これらの克服を目的として、品種改良が行われた事実。
さらに、現在のティピカ/ブルボンは交配による改良種ではないかとの指摘も聞きます。
これは『コシヒカリとコシヒカリBL』の話題が参考になると思います。

原種を大切に育てましたという売り口上が有効なのがコーヒーの現状です。
(念のため:説得力あふれるストーリーを否定するものではありません)
しかし知識があれば交配種の地位は向上していいのです。
現在の「原種回帰」は一過性の流行・過渡期の現象と言って良いでしょう。
これは歴史が証明してくれるはずです。

ふたたびコメの例を挙げます。
最近まで高級ブランドとして認知されていた新潟米の販売が伸び悩んでいると言うニュース。
報道では価格が高いこと、コシヒカリが「過去の品種」になりつつある現実が指摘されています。
そして産地ものんびり構えている訳でなく、新たな品種の開発を進めていること。
産地の気候風土に適合させることはもちろん、食味の開発は『冷めておにぎりにしてもおいしい』など、
具体的なものです。ここには原種回帰という言葉はありません。

 ***
実は交配や品種改良の基本的な話題は、高校の生物の時間で学べるらしい。
おのれの不明を恥じるばかりです。

by mottano | 2010-06-14 09:54 | mottano頭の中